水系アクリル系圧敏接着剤(PSA)の耐寒性とは、水系アクリル系圧敏接着剤が低温条件(通常は0°C以下)においても、追従性、接着性および柔軟性といった重要な特性を維持する能力のことを指します。これにより、冷蔵物流、冷凍食品包装、屋外の冬季用途などにおいても信頼性の高い性能を発揮することができます。一般的な接着剤は低温下でガラス転移温度(Tg)が上昇し硬化するため、表面の粘着性が低下し基材への接着が難しくなるほか、脆性が増して応力がかかった際に内聚破壊を起こす可能性があります。耐寒性を向上させるためには、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)やオクチルアクリレートといった低Tgモノマーの配合比率を増やして接着剤全体のTgを低下させ、ポリマーマトリクスが凍結条件下でも柔軟性を保てるようにするなどの配合設計が施されます。フタル酸エステルフリーのエステルやポリオールなどの可塑剤を配合することで分子の可動性を高め、接着剤が硬くなるのを防ぎつつ内聚性を損なわないようにします。水素化炭化水素系樹脂や液体ポリブテンなどの低融点粘着付与剤を添加することで、ポリマーマトリクスが硬化しても表面の粘着性を維持できるようにします。架橋密度は慎重に調整され、適度な架橋により低温下でも内聚性を保ちつつ、過度な硬直性や脆性を防ぎます。乳液粒子径も最適化され(通常は100〜200nm)、低温の基材に均一な皮膜形成を促進し、十分な被覆性と密着性を確保します。評価プロトコルには、−20°Cおよび−10°Cでのピックアップ試験による粘着性測定、冷凍された基材(例えば段ボールやプラスチックフィルム)からのはく離強度測定、低温下での曲げ試験による柔軟性評価などが含まれ、性能を検証します。これらの配合により、水系アクリル系PSAは寒冷環境下での適用時に確実に接着し、冷蔵または冷凍中もその状態を維持し、製品が冷蔵庫から出庫された後も安定した性能を発揮することができ、冷蔵チェーン包装や冬季の屋外用途において不可欠な存在となっています。